今日、とあるメーカーの方のお話を聞く機会あったのです。
多くの人が「あぁ、知っている!」というメーカーさんなのですが、専門的な機械を作っているメーカーさんではなくて、誰でも手にする事がある様な日用品を作っているメーカーさんです。そのメーカーさんで、「え?そんな装置を作っているのですか?」という本業とはかけ離れた分野の機械だったのですが、その開発に関するお話がとても面白くて勉強になりました。
偶然なのですが、最近私がお手伝いをしているも開発案件の中に、ある遠隔操作の装置があります。人間が操作をした事を離れた場所に伝え、操作の通りに動かそうという装置です。私がお手伝いをする前から外部のエンジニアの方に依頼した設計などは始まっていて、私が関わる様になったのは試作が出来上がってきた評価の段階からです。
試作の評価ですが、あえて仕様書等は読まず、また技術的な細かい説明も聞かずに納入予定先のオペレーターの方が操作をした時に、気持ち良く使えるか?という感性ともいえる部分で「こうしましょう!」とか「ここはダメです」とお話をさせてもらっています。
モーターを使って位置決めをする部分がありますので、当然その位置決めの精度は求められますが、精度を追求して操作性が悪くなりオペレーターの方にストレスがかかる様では良い装置と言えません。私はそう考えました。
ですので、仕様書の文字や数値,グラフと言った手段では表現できない部分について「こうしたい!」という事を伝えて改善して貰います。
色々な制限事項がありますから、理想通りの物はできません。ある程度精度を犠牲にしても操作性を求め、操作性を求めすぎて精度が落ちてもいけませんので、ここはバランスでトレードオフの部分を想定しながら詰めていく作業です。
全く違うお話を上げましたが、ここに面白い事があったのです。
最初に挙げたメーカーさんは、人間が操作する事無く精度良く作業をし、かつ効率を上げるためにタクトタイム(一つの工程でかかる時間)を短縮する為の工夫をされています。
私が求めたのは操作性。人間の操作にかかる時間は、自動機のタクトタイムとは比べ物にならないほどゆっくりとしたものですから、工夫をする部分については全然違うだろうと思っていたのです。ところがお話を聞いているうちに、工夫をしている内容が大筋で一致していました。
基本的にはサーボ系のフィードバック制御ですから、理論的には確立されているはずです。私はまったくの素人ですのでそういった理論は知らず、ラジコンで遊んでいた経験から人間が操作をした時にどの様に動いてくれれば満足するのか?という視点で詰めていきます。
また、制御に関する理論通りに動けば良いとは限らなくて、ある種の演出(私はこの言葉を使って説明しました)を盛り込む事でオペレーターの満足度を上げようと考えました。
その内容がタクトタイムを詰めて精度を上げる工夫とほぼ一致していたのです。これは驚きました。
偶然なのか、それともそこに行きつくのが真理なのかは分かりませんが、人間が満足する動きと言うのは自動機にとってもっとも効率が良い動きの様なのです。
これ以外にも、先のメーカーさんは操作パネルを始めとする色々な部分についても工夫をされていました。私が関与している装置と似た機能は表示部なのですが、ここも全く同じ考えである種の演出をもとに作られているそうです。
人間とは欠点も多いけれど、やはり進化の過程で生き残ってきたのは神のデザインなのかもしれないと思ったのでした。
追記。
きっと、設計をしたエンジニアの方には嫌われているだろうな!と(笑)
だって、仕様書にも書けない様な感性の内容について「こうして欲しい」というリクエストの連発です。それも、途中から入ってきて、それまで進めてこられた内容を全否定ではないですけれど、「そこはいらない」と言い切ってしまいますから(^-^)
でもね、「物を作る」というだけではなく、「お客さんに使ってもらって満足していただく。だから、お金が頂ける」とい観点から見れば、エンジニアの技術的満足から「どーですか?凄いでしょう!」という自己表現的な(そして、自己満足型とも言える)物作りではなく、「お客さんの要望をどうやって実現するのか?」がこの場合の物作りの基本姿勢だと思うのです。