これは私の「現時点での持論」です。世の中の流れは時として変わりますし、私も考えが変わるかもしれませんしね。その点はあらかじめご了承下さい。
さて、ここのところ某IT企業による某放送局の買収騒動が世間を騒がせていますが(笑)、某IT企業社長が度々発言している「放送と通信の融合」についてです。
「放送と通信の融合」とは何でしょう?この10年ほど、ずっと語られているキーワードです。私の考える放送と通信とは・・・あり得ません。そう、放送と通信の融合はあり得ないと考えています。
まずは、私の考える放送と通信の概念です。といっても、Levicoの書くことですから大したことはありませんよ(笑)
・放送
言うまでもなく、情報を同時に多数の人に届けるものです。ラジオやTVの特性そのままで、同一の情報を広めるという点に特化しています。その反面、相手に合わせた情報を送ることは得意ではありません。漢字の通り「送り放し」というべきでしょうか。
1対nの情報伝達手段です。
・通信
電話や郵便が代表的な例です。相手に合わせた情報を送り、それも双方向性を持っている事が特徴です。双方のコミュニケーションを取ることが出来る代わりに、多数の人へ伝えることには向きません。
1対1の情報伝達手段です。
さて、私の考える放送と通信の融合は・・・ありえません。なぜなら、放送が双方向になった段階でそれは放送ではなく、通信です。
まず、双方向で同時に多数の人へ情報を伝達するというシチュエーションが起こりにくいと考えます。人間は個々の考えを持っています。その為、双方向性のメディアによって情報を送ってきた相手にもこちらの情報(往々にしてそれは情報というよりも個人の考えや主張ですが)が伝えられる場合には一方的な受け手ではなく、自分の考えも相手に伝えようとします。まだ双方の人数が少ないうちは周囲の意見も聞けますし、コミュニケーションも成り立ちます。しかし、実際に行われている放送の規模を考えてみれば、それがどんなに困難なことかが分かると思います。
例えば、民放のTV局で行われている放送を同時に100万人の人が放送を見ているとしましょう。これは成り立ちます。しかし、双方化されたならば・・・100万人の人がそれぞれに意見を伝え合おうとします。n対nの構図ですが、無理です。整理がつきません。もっと限定して、一人のコメンテーターの意見に100万人の人が意見を伝えようとしましょう。1対nの構図にはなりますが、これも現実的には無理です。そのコメンテーターが100万人の意見を聞くだけでも膨大な時間と労力がかかります。
インターネットの世界で放送と言えばストリーミング配信といった事がすぐに上がってきますが、もっと身近な物があります。そう、ホームページです。基本的にホームページは見る人を限定していません。誰が読むかは分かりませんが、多く人が見てくれることを期待して作成,公開しているはずです。まさに、放送的な使い方です。
「ちょっと待って、ホームページへの反応はメールで受けられるじゃないか!?」という方も居るでしょう。
んー、素晴らしい。でも、私からも・・・「ちょっと待って下さい」です。
ホームページへの反応がメールで寄せられる場合ですが、これはそのホームページを見た人がホームページを公開している人へ送られます。そう、送る人と受け取る人が特定されていて、多数の人が見ることを前提とはしていません。つまり、「ホームページという放送とメールという通信を使い分けている」のです。
「それは分かった。でも、Levicoも書いているBlogはどうなんだい?トラックバックなら元になる情報に対して同じように不特定多数を相手にした情報発信ができるじゃないか」。鋭い、そう思ったアナタは実に鋭い方です(笑)。
確かに、Blogは放送的な情報公開に対して同じように情報公開を行うことが出来ます。でも・・・「放送の様に公開されているアナタの情報に対して、私も同じ様に放送的に情報を流していますよ」という事を知らせる事はトラックバックにできます。ですが、根本的には放送に対して放送で返しているのであって、放送と通信が融合している事ではないのです。