この10年近くの間、特にこの2,3年は色々な会社さんのお手伝いをさせて頂いた。
多くは元々大手メーカーの下請けとして組み立てを中心とした生産に関わっていた会社さん。
以前ならば発注元の大手メーカーから安定した受注があったのだけれど、不況や生産拠点の海外移転で組み立てといった仕事が激減してしまって、新しい道を模索している会社が多かったです。
ほとんどの会社さんが挑戦するのは自社製品の開発。
でも、この道がうまくいっている会社さんは私の接した限りではほとんどないんですね。
中々自社製品ができない。
理由は簡単だと思います。人的リソースとか、ノウハウの蓄積といった事もありますけれど、私が一番感じたのはマインドの問題なんです。
大手メーカーの下請けで組み立てを主業務としていた会社さんの場合、従来ならば発注元のメーカーから作業指示書とか時には部材の支給もあって、言われた通りキッチリと組み立てる。組み立て会社の場合は余計な事をせずに指示された通りに作業を行うのが正しいのですから、今まではそれでよかったんですね。
でも、自社製品を開発するとなると「指示待ち」じゃなくて自ら行動しなくちゃなりません。自分たちでゼロから作る訳ですから、誰も指示なんて出してくれない訳で当たり前の事なんです。
自社製品にチャレンジした会社さんの多くは、開発や設計経験を持つ人がいませんから転職で技術者を雇います。
最近はリストラが流行って(?)いましたから、大手メーカーのエンジニアが中小のこういった会社さんへ転職します。
これで解決・・・しないんですね。
今まで働いていた社員さんは組み立てに関しては豊富な経験と技術を持っています。ここは非常に強い。
しかし、指示が無いと動けない方が本当に多いんです。自分で考えて何をしなくちゃならない!?というところがうまくできない。これが問題です。
でも、これはしょうがないんです。初めての事ばかりなんですから、勘が働くポイントが分からないんです。
そして転職してきた技術者さん。大手メーカーだとかなり高度な事に携わってきた方が多いのですが、大手メーカーであればあるほど担当している部分は一部に限定されてしまいます。自分が経験してきた事は分かるけれど、設備や資金に限りがある中小企業では他の分野の仕事も知っていてやらなければならない事が多いんですね。でも、やっぱり経験が無いから勘所が分からない。やっぱりしょうがないんです。
例えば、大手電機メーカーであるジャンルの製品の品質管理部門で働いていた方がいたと仮定した場合、そのジャンルの品質管理手法はとても良くご存知です。ところが、自分で回路設計をしたりプログラムを書いたり、客先などでどの様な使われ方をしているかを知らない場合が多いですから開発がやっぱり進まないんです。
組み立てに携わっていた方からは「指示があればできるけれど、指示が無いんだからどうしようもない」という声が上がりますし、開発担当の方からは「試作の段階でいちいち細かい指示書なんて作ってられない」となります。そりゃかみ合わないですよ。
お互いに反目して、転職してきた方はその会社さんでの社歴も浅いですし周囲は動いてくれないですから孤立しちゃう。現場の方からは「大きい会社からやってきて仕事ができない奴だ」となってしまう。
中にはうまくやっている方もいらっしゃいます。現場の方も時間を見つけては開発担当の人の所へ行って色々と教えてもらったり、ご自分で調べたり。開発担当の方も組み立てに関しては現場の方がとても詳しい訳ですから、そのノウハウを教えてもらう。そうやっている人たちはお互いにドンドン信頼関係ができてきてうまく回ります。
特に中小企業は人員も少ないですから自分の受け持ちなんてあってない様なもので、他部署の事も良く知っていなくちゃいけないんですから、「それは俺の範疇の仕事じゃない」なんて言い始めたらいつまでたっても終わらないです。
私が思うに単純な事なんです。それはマインド。
「知らない事を興味を持って知ろうとするマインド」であり、勿論自分のメインの仕事をおろそかにしちゃいけないですけれど、「ドンドン他の担当者や部署の受け持ちの仕事もやってみるマインド」だと思うんです。
最初は何も知らない分野なのですから手が出ないのはしょうがないです。でも、興味を持って見たり聞いたり調べているうちに知識が頭に入り、実際にやってみて経験を積むと理解につながります。一つ理解できれば次の理解はもっとハードルが下がります。
ここでは組み立ての会社さんを例に挙げましたが、なかなか上の事が出来ない会社さんは同じような感じだと思いますね。
人材派遣などを行っている会社でも同様ですが、なかなか上に上がっていかない会社さんに共通な事は「それは範疇外。責任が取れないからやらない」という言葉が本当に良く出てくる。
挑戦しないから現状維持をするのが精一杯。
私、大したことはできませんけれどこういう事をよく言うようにしています。
- 「できないという理由を10個並べる前にどうやったらできるのか?を1個考えましょうよ」
- 「挑戦しなければレベルは上がりません。運動だって練習して自分の限界だと思っていた事に挑戦するから少しずつ経験を積んでできる様になるじゃないですか」
- 「責任が取れないからと最初からシャットアウトする前に、どうやったら失敗しないかを考えましょうよ。失敗しなければ責任を取る必要はないでしょ?」
勿論、私だってそこそこの年齢ですから責任の範疇や採算の事を全く考えずに取り組むことはしないです。それは意識していますけれど、最初からできない理由を並べる暇があったら自分のブレークスルーを見つける方がよっぽど前向きだし、成功しても失敗しても少しずつ身に付けた事が後々大きな差になるはずです。
ちがいますか・・・ね?(笑)