毎週録画しているTBSのニュースキャスター。今週は先週の「ベトナムに居酒屋を出店する日本人」に続き、アフリカで乾電池を売る日本人の特集でした。これ、シリーズとしての企画なんですね。しらなかった!(^-^)

今回は、アフリカ(タンザニアだったかな?)の大地で乾電池を売っているパナソニックの社員の方でした。
現地では電気が通っている家庭等が約14%。それも都市部が中心で、市街地を離れると集落でも電気を引いているのは1軒程度しかないそうです。
その為、電源はもっぱら乾電池。

この乾電池ですが、現地法人の社長さん(日本人)は「First Panasonic」と言っていましたね。現地の人が最初に触れるパナソニックの製品がこの乾電池だと。たぶん、この乾電池での印象が将来収入が上がって別の電気製品を購入する時に「あ、パナソニックを買おう」という動機づけになるという事を言っていたと思います。ふむふむ。

とにかく現地での状況ですが、中国製の乾電池がシェアを伸ばしているのだそうです。取材では、その中国メーカーの担当者にインタビューをしていましたが、「価格です」と言い切っていました。実際、パナソニック製の乾電池と比べて値段が半分らしいのですね。街中でも中国製ばかりが売られている様です。

その価格が災いしている様です。
というのは、その中国製乾電池は「液漏れ」が凄い。乾電池が紙製の筒なので液漏れしちゃうのです。結果として液漏れが貴重なラジオ等を壊してしまう。
そこでパナソニックの担当者の方は市場が無い部落を回っていました。部落について、「ラジオなどを持ってきてください」と呼びかけ、住んでいる人に持ってきてもらう。アンテナが取れたり、液漏れで端子が腐食しているラジオはその場で修理をしているそうです。それも無料で。
また、まだ電池が残っていて音が鳴るラジオについては「電池を交換しなくて良い」と説明しているそうですね。そうする事によって、現地の人も「この日本人は信用できる」と思ってくれるのだそうです。

収入が少なく、購買力が弱いうちはやはり価格がもっとも訴求力が高いでしょう。パナソニックさんも乾電池のバラ売りなどで購入コストを下げる工夫をされている様ですが、ここが日本メーカーの凄いな!と感じた部分として、「製品のクオリティを下げない」という事です。
パナソニックさんの乾電池も現地生産をしていますから、労働コストは安いはずですね。中国製と同じように構造を安かろう悪かろうにしてしまえば、価格は下げられます。それをしない。あくまでも品質はそのままで、目に見える原価コストがかからない「サービス」という品質で勝負に出ているのです。

これは私がこのBlogで書いている「高付加価値路線」と同じではないでしょうか?

確かに、現地の人が「液漏れがラジオを壊す。高いけれど、液漏れを起こさずに寿命も長い日本製が良い」と思ってもらえるまでは苦戦が続くでしょう。しかし、現地の人がその事に気づいた時・・・中国メーカーがいくら大金を投じても手に入れるまでは時間がかかる「ブランドイメージ」をパナソニックさんは手に入れているはずです。

余談ですが、私は日本の自動車メーカーの経営に興味があって、各メーカーについて書かれた本をいろいろ読んだことがあります。日産に関する本を何冊も読んだ時に指摘されていたのが「ブランドを捨てちゃった」という事です。
日産は経営が迷走していた時に何十年もかかって築いてきたブルーバードとかサニーをやめちゃいました。特に、ブルーバードを止めた時に経営陣へのインタビューでは「プリメーラを作っちゃったしな」との回答だったそうです。確かにプリメーラは良く出来ていました。当時のセダンとしては「さすが!ヨーロッパ対策車」と思わせる出来でしたし、私も2台乗り継ぎました。それ位に良い車。
でも、ブルーバードが築いてきたブランドイメージはそう簡単に捨てちゃいけなかったはずです。ゴーンさんが就任してまずやった事はコストカットばかり取り上げられていますが、北米で圧倒的に認知されているフェアレディZの復活であり、日本で神話となっているスカイラインGT-Rの復活です(今のGT-Rはスカイラインじゃないですけれどね)。ブランドイメージなんですよ。
トヨタはカローラを捨てない。その上で、プリウスというブランドイメージを新たに作り上げた。ホンダはシビックを止めてしまう。どのメーカーが迷走していて、どのメーカーが成功しているの?と符合しませんか?

ソニーは強烈なまでのブランドイメージがある。低迷しているとはいえ、熱狂的なファンが存在します。今のサムソンが一番欲しいものはなんだと思いますか?ブランドイメージなんです。どんなに宣伝広告費を投じてもそうそう簡単に手に入らないもの。その代り、手に入れたら強いもの。それがブランドイメージです。

話を戻しましょう。先ほど紹介しましたが、パナソニックの社長さんが語っていた「First Panasonic」は乾電池の戦争だけではありません。その後も見据えたブランドイメージの構築を意味していると思います。

決して楽な道ではないでしょうが、頑張っていただきたいです。