だいぶ話題としては落ち着きましたね、JR北海道の貨物列車事故とレール幅の検査データ偽造問題。
マスコミはこぞって「JT北海道の体質を改善すべき」と主張していて、それはそれで正論なのだけれど、皆が分かっていて報道では触れない部分がありますよね。
結論から言えば、この体質は改善しないしできないですよ。

法律面とか倫理観は当然あるべきものだけれど、根本的に保守に使える資金が無いんです。だから改善はできない。

一般的に、世の中効率化の波が凄くて、社員に仕事をさせるとコストがかかるからといってアウトソーシングが未だにブームですよね。
外部に出せば支払いは発生するけれど内部コストは見かけ上削減できるので効果はあります。お金が払えるうちは。
ところが委託先に払う予算が無くなった場合、社員が手弁当(端的にいえば無給)で作業をしようと思ってもすでに機材はないし技術もない。で、やっぱりできない。
鉄道に限らずインフラ業はインフラを構築した後にどれだけそれを維持できるかがひとつのポイントですが、保守はお金を生みません。広告を打てばお客さんは増える事もあるし、新しいインフラを作ればやっぱり収入が増える事がある。しかし、メンテナンスは直接の収入を生みませんから、真っ先にコストダウンを求められます。
動いていれば(使えていれば)できるだけメンテは先延ばしにして目先のコストを圧縮する。中央道のトンネル崩落事故もそうだし、各地の道路でも同様の事は起きています。電気だって通信インフラだって同じです。携帯各社の通信事故が多発するのも根本は同じことです。
携帯各社は4Gで実質値上げ(基本料金の話ではなく、通信量で制限がかかりその後は従量制です。以前は完全重量制でしたよね?)に踏み切っていますが、鉄道とか道路はなかなかねぇ。
JR北海道は毎年300億円の赤字があり、国からの支援でようやく収支トントンとの事ですが、じゃあ保守をキチンとやるために費用がかけられるか?と言えば無理ですよね。いきなり収入と利益が伸びる訳もなく、国からの支援が増えれば福祉とか1次産業への支援はどうなる!という声が必ず上がる。

現場の社員が何とかしたいと思っても、委託先に払える費用はなく、職を維持するためには改ざんせざる得ない。上司だって同じ事です。
だからと言って、改ざんを許せとは微塵も思いませんけれど、関与した社員を処罰したり告発したところで構造的な問題は何も変わらないのですから、トカゲの尻尾切りにもならないと思うのですけれどね。

300億円の赤字までは報道されますが、「無い袖は振れない。どうしたら良いのか?」まで切り込まないんだよなぁ。


余談。
20世紀の終わりころ、とあるネットワークの仕事をしていました。まぁ、学生向けですよ。
で、費用をギリギリまで削っていますから、万全の設備と体制とはとても言い難い。かといって、その部分を強化すれば赤字になってサービスの維持すらできない。
で、学生さんから「企業努力でなんとかしてください!」とクレームが来るわけですよ。

いや、ちょっと待て。希望する体制に見合った利用費用も払わず、働いてもいない(事業運営のコスト感覚を持たなくて良いバイトは極論からすれば働いていないのも一緒)学生さんに企業努力と言われてもなぁ(笑)
※当時、なぜか企業努力という言葉が流行っていましてね。

いや、あなた方がサービス運営の労力に見合った費用を払ってくれるなり、低コスト(できれば無給)でこちら側の一員として働いてくれればリクエストはかなえられるのですけれどね!と何度思った事か(笑)