まだ20世紀だった頃のお話。
当時勤めていた会社に若者が入ってきた。時期が中途半端だったら、中途入社なんだか契約社員なんだか派遣社員なんだか・・・覚えていないけれど、とくかく20代半ばの若者。
で、ちょうど客先でサーバや社内ネットワークの管理者を探しているというので、勉強もかねて常駐として送り出したの。10名ちょっとの規模だったし、良い勉強になる・・・はず。

まぁ、とりあえず勉強はする若者だったのね。確か、Windows2000 Serverだったと思うのだけれど、マニュアル本を買ってきて、最初のページから一つ一つ確かめていったのね。真面目に。

ただ、真面目なのと理解がリンクしていなかったの。マニュアル本に書いてある事を自分なりに理解してから実験をして確認ならば良いのだけれど、どうも彼は「マニュアル本に書いてある事を試してみて理解する」というタイプだったみたい。これ、似て異なる事。
というのは、とりあえず何も考えずにやってみて、起きた事を理解する。概ね間違えていない勉強方法ね。

最大の問題はそうそう月日がたたない頃にやって来たの。

ある時、「サーバが動かないんです!」という連絡が来たのね。電話で聞いてもよく分からないから、現地へ向かったの。私だけじゃなくて、上司もひっくるめて当時の会社としては結構な人数で行ったのね。
で、現地でサーバを見てみると・・・単なる置物になっていたのね。スイッチを入れるとちょっとだけランプがつく単なる箱。

そう、彼は何が起こるのかを想像する事無く、マニュアル本を片っ端から試していたので起きた出来事なのよ。

「サーバの削除」

そう、その操作を何も考えずに試してみたのね。そりゃコンピューターさんは忠実に動くので彼の命令を受け取って忠実に実行したのよ。削除を。

確かに、起こる事を想定もせずに実機で試すのも大問題と言えば大問題なのだけれど、まぁ経験が浅いから大目に見ることもできる。後のフォローは大変だけれど、こっちでやれば良い。

彼が終わっているな・・・と思ったのは、次の言葉。

「いくら払えばいいんですかっ!!!」

自分のしでかしたことを謝るでもなく、損害倍書としていくら払えば良いのか?という意味。

「あ、こいつ終わってるわ」

うちの会社に来る前は家で株とかやっていたらしい。そこそこお金がある家だったらしい。
物事を全て金でしか考える事ができないって、人として終わっている。

すぐに(確かその日以来)会社に来なくなったけどね。

嘘の様な本当のお話。