今年の3月に、北海道で吹雪の中で車が立ち往生してしまい、乗っていた父と娘が近所の民家に避難する途中に吹雪のため身動きがとれなくなってしまい、父親が亡くなってしまうという痛ましい事故がありました。

この事故を受けて、総務省が「消防からの問い合わせがあった場合、携帯電話会社は位置情報を提供する」というルールができたそうです。これでこの様な痛ましい出来事が減る事を願います。

今回私が驚いたのは携帯のGPS情報を消防には提供していなかったという事。
携帯のGPS機能は機器メーカーが載せ始めたものですが、「緊急時に通報者が正しい位置を伝える事が出来ない」という事を受け、総務省が携帯電話会社にGPS機能の搭載を要請したという経緯があります。
そのため、警察には位置情報が提供されていて、事故に限らず事件でも有効に機能した事は知られていると思います。
しかし、消防には提供されていなかったのですね・・・

事故の当時、消防から位置情報提供の依頼が携帯電話会社にあったそうなのですが、携帯電話会社は「捜査権がない消防には提供できない。警察を通してほしい」という回答をし、消防はそれを受けて捜索を諦めていたそうです。

GPSの位置情報は個人情報にあたりますから個人情報保護法によって守られています。これは重要な事です。
そして、携帯電話会社も法律を守るという観点から情報の提供を断った。これも法律に従えばそうなります。携帯電話会社を責めることはできません。

ただ、この様な緊急時にはコンプライアンスよりも人命を選択できなかったのかな?とは思います。携帯会社がGPS情報を提供すれば法律に違反してしまいます。ただ、GPS情報の提供で人命が救われたのならば、司法も「無罪」とするのではないかと思うのです。

人命は法律より尊いはずです。

そもそも個人情報保護法は同窓会名簿等からダイレクトメール等に使う名簿の作成や売買といった悪用を規制することが目的で成立したはずです。ところが、この個人情報保護法が施行されてからも業者の名簿は減りはしても壊滅してはいませんし、逆に学校の緊急連絡網ですら「個人情報だ」という懸念から作成できないという現実があります。これは当時から疑問に思っていて、ある新聞社の取材を受けたこともありますし(記事にはなりませんでしたが)、この新聞社以外の記者の方とも話をした事があります。

個人情報保護法そのものが悪い訳ではありません。ただ、その運用が本来の趣旨を外れている事が多々見受けられる事に疑問を感じるのです。

今回の事故で亡くなられた方は誠に無念かとは思いますが、これが1歩となって次に同じような事が起きなくなる事を願ってやみません。