docomoさんが、来年にも新しいOS(Taizen)を載せたスマホをリリースするらしい。
AppleのiOSとGoogleのAndroidでシェアの90%を持っている状況を打破したいらしいのですね。

たぶん、無理だと思う。

スマホとかタブレットが本格的に台頭してきて、だいぶ前から進んできたOS → アプリへという主導権を持つレイヤーのシフトが一気に進んでいます。時代はOS主導じゃなくて、アプリケーション主導なんですね。もっと端的に言えばコンテンツ屋が一番力を持っている。つまり、スマホが台頭した段階で、「電話機」ではなくて「携帯できるコンピュータ」なんです。
で、コンテンツ屋とかアプリ屋が力を持っているという事はどういう事か?

現在、Androidはシェアの60%を超えているらしいです(IDCの調査結果)。どうも2012のQ3では75%のシェアを持っているらしいですね。AppleのiOSは減少傾向にある。これは販売台数から見たシェアです。
他の調査ではこんな感じです。こちらはStat Counterさん。
20121230_StatCounter-mobile_os-ww-monthly-201111-201211
確かにAndroidがiOSを上回っています。

では、アプリの供給状況は??と言えば、AndroidじゃなくてiOSが優位なんです。
実際にアプリを開発されている方のブログとかを拝見すると、同じアプリをiOS用とAndroid用の両方を作って、Android版のダウンロード数は半分くらいらしいです。この方に限らず、今までの各種報道でもiOS版の方が強いのです。

なぜ?簡単です。

iOSはAppleがハードウェア,OS共に1社供給です。なので、アプリを開発する際に細かな派生バージョンの作成をしなくても済みます。例えば、今日現在iOSのアプリを開発するとして、iOS6に絞ってみれば動作検証機の用意はiPhone5とiPadにiPad mini。強いて挙げればiPod Touchを用意すれば事足ります。iOS5系もまだ市場に残っているでしょうけれど、ユーザーにバージョンアップをしてもらえば済むことです(強引ですが)。
その点、Androidはハードウェアが複数から供給されています。動作検証をしようと思ったら、膨大な数の端末を用意しなくてはになりません。更に、現行のAndroidは4系ですが、2012年の10月現在、市場で稼働しているAndroid端末の過半数は2010年リリースの2.3という事もGoogleの調査で分かっています(IT mediaさんの記事参照)
20121230_android
つまり、開発側は2.3系と4系の両方。そして、多数の端末用にリリースしなくてはなりません。

更に、先のStat Counterさんのサイトで国別の統計を見て頂くと良く分かりますけれど、Androidが強いのは中国や韓国以外は発展途上の国の様です。俗に言う先進国はiOSが頑張っています。
コンテンツ屋さんから見たら、「コンテンツを購入してくれる先進国向け」に目が向きますし、アプリ開発のハードルも低い。投資を抑えるためにiOSにリソースが向けられるのは当然です。

AndroidはAppleと違って多くのメーカーが端末を供給しています。独自の機能を持たせることもできます。実際に、国内向けのスマホはワンセグやおサイフケータイ等、まだまだ到底グローバルとは言えない機能を載せる事が出来ています。
自由である。でも、多様性があるからこそ、アプリ開発の妨げになっていると思われます。

話を戻します。こんどdocomoがリリースするTaizen端末は「キャリアが独自機能を盛り込むことができる」等、拡張性と差別がウリです。OSの開発もdocomoやSAMSUNGだけではなく、intelやVodafone等強力な布陣です。これだけ見れば成功しそうです。でも・・・
Androidでも独自機能を盛り込んだりすることはできていますよね?これでもiOSに対してアドバンテージは無い。更に多様化が進むであろうTaizenはもっと不利になるのではないでしょうか?


時代的背景もあるので一概には比較できないのですけれど、PCが爆発的に普及した一因はMicrosoft Windowsの功績は間違いないと思います。Windows登場以前はMS-DOSの世界でしたし、更にそれ以前は各ハードメーカーが独自のOSを供給していました。つまり、何かしようと思っても互換性が無い。

MS-DOS(PC-DOS)の時代になってIBMが俗にIBM PC/ATと呼ばれるアーキテクチャを作りました。このお蔭でハードウェアの仕様統一化が進み、サードパーティの登場が進みました。結果、IBMは衰退していきますがPC市場は大きく前進します。
日本もPC-9801アーキテクチャが市場を席巻していましたが、IBM PC/ATにとってかわられます(人によって違いますけれど、当時のPC-9801とIBM PC/ATではPC-9801の方が優れていいたという見方が多いようです)。ハードウェアの仕様が統一化された事でOSも表示言語のローカライズは別して、ひとつの仕様で開発できます。OSの違いが無くなれば、アプリケーションもWindowsに合わせて開発するだけで全世界を相手にリリースできるというメリットが出ます。
互換性。これは非常に重要な事で、どの会社でも、どの国でもWordとかExcelが使われていて作成したファイルが使いまわせる。これはとても強いです。AdobeのPDFが市場のデファクトになっているのも同じ理由ですね。

実際、コスト削減という事で企業だけでなく、自治体などでもOffice Sweet(WordとかExcel)互換のOpen OfficeとかLibreOfficeの導入がもてはやされた事がありますけれど、意外に進んでいません。
実際に使ってみると、日常使う機能面ではOpen Officeでも特に劣った部分は見受けられませんし、LibreOfficeでは操作性もかなり改善されていて、一般的な事務仕事などのレベルでは何ら問題ないと思います。
ではなぜ普及しないか??
簡単です。作ったファイルの互換性が充分ではないから。


話は横道にそれましたが、今の市場、特に一般ユーザーを相手にするマスのマーケットでは極力互換性をキープする事です。互換性がキープしづらい(そういう風になるだろう。組み込みだから)Taizenはやっぱり勝てないと思うのです。