ここ数年、局地的な豪雨で斜面の崩落、土石流,鉄砲水といった事故が続いています。
この様な事故は昼間の暖かい空気と、日没後の冷えた空気によって大気の状態が不安定になり、夜間に起きる事が多いそうです。昨年の伊豆大島もそうでしたし、先日の広島もそうです。

事故の直後には必ずと言って良いほど「警報は出たのか?」といった話題になります。
私も警報が有効とは思いますし、8月から開始されたXバンドレーダーによるピンポイントの雨量観測による予報で、より高精度の警報や避難命令が出される事を望んでいます。

しかし、警報や避難命令が出たとしても、事故による犠牲は無くならないとも思うのです。

広島の災害では、住民の方から「警報に気付かなかった」という声があると報道されていました。これは、警報の出し方の問題だけではありません。実際に防災無線で警報が流されていても、深夜に起きる崩落や土石流は就寝中であったりすると気づかないと思うのです。
また、別の住民の方からは「避難しろと言われても、周りは泥水が凄い勢いで流れていて家の2階に逃げるしかなかった」というインタビューもありました。

確か平成元年頃だったと思いますが、私の家から徒歩5分ほどのところでも深夜の豪雨で斜面が崩壊し、埋もれた家に住んでいた方と、救出作業中の消防や警察の方が2次災害で亡くなったという事故がありました。
この、埋まってしまった家の隣には中学生の時の同級生が住んでいて、事故の後に話を聞いた事があるのを思い出しました。

深夜、寝ている時に物凄い物音がして目が覚めたそうです。この時、既に隣家は埋まっていたのでしょう。
同級生は何が起きたのかが分からず、家の中は大丈夫だったので再び寝たそうです。その後、消防や警察の方がやってきて、初めて裏の斜面が崩落し隣家が埋まっている事を知り、避難したとか。
その頃は「隣の家が埋まるくらいの事なのに、呑気と言うか・・・」と言っていたのですが、裏の斜面が崩れるなどとは考えたことも無い、まさに「想定外」の出来事でしたから窓を開けて周囲の状況を確認する事まで気が回らなかったのでしょう。
家が埋まるほどの崩落で初めて目が覚めたそうですから、屋外の防災無線で警報が流れたとしても気が付かなかった可能性が高いと思います。それだけでなく、日頃から意識していないと避難するという行動も思い浮かばない様です。

当時の写真が見つかりました。

神奈川県のサイト(急傾斜地崩壊対策事業)より

中央少し左にコンクリートの基礎だけが残っている部分に新築の家が建っていました。
写真からは見切れていますが、同級生の家はその左隣となります。家屋に特に被害はなかったそうです。

行政の方から「想定外」という言葉が出るのをよく耳にします。この想定外を言い訳にされては困りますが、想定外だからこそ事故が起きるとも考えられます(想定内であればそもそも事故が起きない様に対策をしていなければならないので、事故は起きるはずがないというロジックです)。
伊豆大島の時も、数十年にわたって住んでいる方々が「今までに経験したことが無い雨だった」という事でした。また、震災の時に過去の事例から想定して作られた防潮堤ですら、その想定を超えた津波がやってくれば被害は皆無にはできないのです。

過去の事例をもっと掘り起し、新しい事例をもっと積み上げて想定の精度を上げる事は可能ですし、その歩みを止めてはなりませんが、その想定を超えた時にどうするか?というのは各自が常日頃から意識する必要があると感じました。