最近、趣味と実益を兼ねて、VPNをちょっと実験しています。
その中でも、なかなか興味深いのがUT-VPN。私もSoftEther時代に使っていた事があって、Packetix VPNになってからはちょっと遠ざかっていましたが、UT-VPNはなかなか良くできているので興味深々です。
今回は技術的な面ではなくて、お役所仕事についてのお話し。

SoftEtherが公開直後、一時期配布中止になったのは知っていましたが、その経緯は知りませんでした。その模様がUT-VPNのサイトで紹介されています。

SoftEtherは「経済産業省の予算で支出される、IPA (独立行政法人 情報処理推進機構) の「未踏ソフトウェア創造事業 (未踏ユース部門)」に登 大遊が採択を受け、300 万円の予算を割り当てられ、1 年間をかけて開発されました。」とあります。ここまではメディアでも取り上げられていて、良く知られている事です。
ところが、公開直後にこのSoftEtherをある自治体のネットワーク担当者が「勝手に住基ネットに接続」し、「外部から住基ネットに入れる事に驚き」、「こんな危険なソフトを支援する事は何事か!」という騒ぎが配布中止の原因と語られています。

これが事実なら、酷い。

SoftEtherに限らず、IT関係のハードやソフトを含む技術はその使い方によって道具にも凶器にもなります。
ITではないですが、身近な例として例えば包丁。料理などでは大変便利な道具ですが、悪意を持って使えば人を殺傷する凶器になります。まさに、先のSoftEtherはそれと同じで、便利使うために性能向上を図ったところ凶器の可能性を指摘され、一時配布中止に追い込まれたというのです。

そもそも、住基ネットにSoftEtherを接続して、外部からの侵入実験を行うというモラルがおかしいです。勿論、技術検証の意味合いもあるでしょうから、試す事は大いに結構です。ただし、その結果として住基ネットに接続できたからと言ってSoftEtherが悪いのではなく、そもそもSoftEtherでインターネットに接続できてしまう住基ネットのネットワーク設計がおかしいのです。
それを棚に上げて、「けしからん」という発想がおかしい。その上で、経済産業省にクレームをつける行為もおかしいですし、経済産業省やIPAも「配布を中止するように要請した」という事も本末転倒です。

先の包丁を例にあげましょう。例えば、伝統技能として古くから伝わる鍛冶の技術を伝承しようとお役所が助成金を出したとしましょう。すると、「包丁は凶器になるのだから、助成金を出すのがおかしい」というクレームと同種のものだと私は考えます。そしてそのクレームに反応して「包丁を作るのは中止してくれ」と鍛冶屋さんに言うのと同じ事です。
交通事故があるからと言って、だれが「自動車を作るのはけしからん!」という事になるのでしょうか。そして、「自動車事故をなくすために車を作ってはいかん」と国交省は言わないですよね?その差は何なのでしょう。

SoftEtherは便利です。確かに、間違えた(悪意を持った)使い方をすれば危険です。その事を踏まえて、ネットワーク管理者はそれを防ぐ手立てを考えるのが当り前な事だと思います。

お役所って常識がないところなのですね。