これは私の私見です。ある意味、極論です。誤解を招くかもしれませんが、書いてみたいと思います。

私は神奈川県川崎市在住です。3.11大震災では幸いにも家族に怪我はなく、家屋などにも被害はありませんでした。
ただし、これは3.11での事です。東海地震として予測されている次の地震では、「地震防災対策強化地域」ではないものの、かなりの揺れが想定されていますし、少なからず被害があるでしょう。
2004年の中越地震では、母方の親戚のほとんどが被災しました。親戚は震度6強に見舞われた新潟県小千谷市を中心に、津南町等に住んでいます。特に、母親の実家は新幹線の脱線事故があった場所や、トンネル崩落で奇跡的に男の子が救出された現場のすぐそばです。当時、孤立してしまった山古志村は隣の村ですから、その被害についてご記憶の方もいらっしゃるでしょう。
幸いにも雪国(豪雪地帯)ですから丈夫な構造の家ですので、親戚全ての家で全壊は免れましたが、半壊や結局建て直しとなった家もあります。私を取り巻く環境はそのような状況ですので、地震に関する関心は比較的高いですし、ある程度は実感があるとお考えください。
また、3.11で最大の被害のあった地域ではないですが、今までに仙台へは30回ほど出張していますし、塩竈や石巻にも何回か訪れた事があります。震災後には現地に行けていませんが、その土地の雰囲気は知っています。
更に庁舎が津波で襲われ職員の方、32名が犠牲になってしまった宮城県の南三陸町は、まさに庁舎のIT設備を納入していた事もありました。現地にお伺いした事はありませんでしたが、町役場の方と間接的にではありましたが接点もありましたので、とても他人事とは思えません。

話を戻します。震災に関連する私の考えです。

福島では、人類史上最悪の放射能事故の可能性が高い(今後、史上最悪になるでしょう)福島第一原発の事故がありました。いつ来るか、また、どの程度の規模になるかが予測できない地震と津波が原因とはいえ、東京電力の防災対策が不十分だったのは明確です。現場で原子炉の制御に奔走した方々は立派だと思いますが、東電本店の社員はまったく同情できません。
もっと震源に近い東北電力の女川原発が事前の予測を行い、その予測を超える津波だったのにも関わらず、致命的な被害を受ける事なく原子炉の停止に成功しています。(2012年6月29日追記。福島第一でも原子炉の停止には成功しています。ただ、その後も冷却を続けなくてはならないのですが、冷却系の喪失という事態になりました。)真偽のほどは不明ですが、女川原発の施設は当初もっと低い位置に建設予定でしたが(これは致命傷を受けます)、当時の責任者の意向により津波を考慮して高い位置への建設に変更になったという報道があったそうです(このリンクでは女川原発の津波に対する評価資料と、コメント欄で設計変更が行われたとの記載があります)。

話を進めましょう。震災直後は宮城県を中心とした津波被害に報道の焦点が当てられていました。それが、時間の経過とともに福島に焦点が当たられるようになりました。これは前途多難とはいえ、復興のフェーズに入った津波被害の地域と、その復興フェーズにすら入れない放射能被害の地域の差だと思います。

私が最近強く感じるのは、福島でヒステリックと感じるまでに反原発を訴えている人が多いという事です。
私は直接影響のない神奈川在住ですから、実感の無い考えかもしれませんし、その点については否定しません。勿論、今回の原発事故で放射能の怖さは広く知れ渡りましたし、事故の事を考えれば原発が無い方が正しいと思います。原発事故の恐怖、それは誰も否定できないでしょう(一部の利権構造ドップリの人は知りませんが)。
ただ、私が違和感を感じたのは、福島で反原発を訴える人の中に「福島が!福島が!福島が!」という被害者意識を感じたからです。原発事故と津波被害の違いはあるとはいえ、震災の被害は福島だけではなく、宮城や岩手でもありました。不謹慎かもしれませんが、亡くなったり行方不明になった方は福島より宮城や岩手の方が多いです。肉親を亡くされた方、一家全滅になった家。街が壊滅した地域もあります。

その点、福島では津波被害を受けた地域を除けば、住むことができない(これはこれで大きな問題ですが)とはいえ、原発事故で避難できた方は命があります。まだ生きています。
報道でしか知りえないので正しくは無いかもしれませんが、原発事故が直接の原因で亡くなった方は現時点ではいらっしゃいません。避難生活が苦痛だったり、将来を悲観されて自殺された方がいらっしゃるのは知っています。その方々を区別するのは酷かもしれませんが。

最初に違和感を感じたのは、中通り地方に住んでいたある女性のツイッターやブログの記事を読んだ時です。一方的にですが、震災前からこの方を知っていまして、ずっとツイッターやブログを楽しみにしていました。その方の論調が「福島が!」に変わったのです。
最初の方に書きましたが、私は宮城が好きです。その為、宮城に肩入れしているのかもしれませんが、震災の被害は福島だけではないと思います。

2012年3月10日現在、警察庁がまとめたところによると、一連の余震での死者も含め、死者15,854人(宮城県9,512人、岩手県4,671人、福島県1,605人、茨城県24人、千葉県20人、東京都7人、栃木県4人、神奈川県4人、青森県3人、山形県2人、群馬県1人、北海道1人)、行方不明者3,155人となっている。
Wikipediaより引用

確かに放射能被害がもっとも大きいのは福島です。しかし、直接的な放射能被害ではないですが、魚介類が売れない等、生活のすべを奪われた人は福島以外にも多くいらっしゃいます。この方々を含めて「原発反対」を訴えるのであれば良いのですが、どうしても福島発信の情報、それも福島から避難された方の情報は福島が(極論すれば「福島のみが」とも受け取れる)被害者という面が強調されていると感じます。

更に最近怖いなと感じるのが、反原発の方に多く見られる特徴なのですが、ちょっとでも原発反対運動の事が報道されないと「政府の隠ぺい」,「マスコミの情報操作」と結びつける意見が多いという事です。
私も広告主と言うスポンサーが収入の一部であるマスコミが100%正しい報道をしているとは思いません。ですが、かといってすぐに情報操作と決めつけるのはいかがなものでしょう。同じく、政府の発表も信頼できるとは限りませんが、短絡的に決めつけるのはいかがなものかと思います。一方的に自分の考えで押し進むのではなく、色々な意見や見解に耳を傾け、その上で取捨選択をする必要があると思うのです。
どうも、反原発派の方に限らず、「声の大きい者の意見が通る」という風潮が強まっていると感じます。俗に言うネット右翼とかプロ市民と同様ですね。

長くなりましたが、震災の対応もっと冷静である必要があると思います。津波だけの地域でも復興には10年,20年と言う年月が必要でしょう。放射能汚染地域はもっと長く、いや、永久に住めないかもしれません。一時の考えで突き進むのではなく、冷静に、そして息の長い対応が必要だと思います。