「まぁ、Levicoの言う概念の様なものは分かったとしよう。でも、インターネットなら放送も出来るし通信も出来るんじゃないの?」というアナタ。私の文章を読んで、とりあえず理解しようと下さるなんて、なんて素晴らしい方なのでしょう!(笑)

確かに、インターネットでは放送も通信も出来ますね。一時期話題になっただけではなく、最近はTVのCMでも流されますし、ホテル等でも需要が高いもの・・・そう、ビデオ・オン・デマンド(VoDですね)です。
このVoDなのですが、私の概念から言えば「通信」です。なぜなら、「好きな時に好きな映画を見ることが出来る」のがVoDのウリです。そう、「同時に同じ映像(情報)を多数に送っているのではなく、それぞれに別々の(もしくは同じ映画でも見始めたタイミングは違うので)情報を送っている」のです。ですので、放送ではなく通信の一形態であると思います。
一時期、仕事でVoDを調べたことがありました。また、個人的にVoDサービスを受けたり、実験もました。ちょっと技術的な話になりますが・・・
まずインターネット上で行われているVoDサービスはUnicastで行われています。これは好きな時に好きなコンテンツを利用するというVoDの性質上、しようがないことです。普通のMulticastでは「好きな時に好きなコンテンツの再生」は実現できません。Unicastは、ズバリ「相手を指定してデータの伝送を行う」のであって、やはり私の考える放送の定義からは外れます。
もっとも、Multicastを使って「好きなタイミングでコンテンツの再生ができる技術」も存在します。特殊なサーバと専用のクライアントソフトが必要でしたがうまくできた製品でした。ただし、複数のコンテンツを送出するにはそれ相応のバンド幅が必要であり、製品としては成立してもコンテンツビジネスとして成立させるにはランニングコストの問題から実現は困難な物でした。

現在のインターネット環境では、複数のMulticastを送出するには費用がかかりすぎます。更に、ネットワーク全体がMulticastに対応できておらず、ISPが自分の持っているネットワークで完結している中で行うのであれば良いのですが、他のISP等からの利用も考えた場合、Multicastはまだ実用性が低いと言わなければなりません。そう、Multicastは社内LANといった閉じていて、かつ、バンド幅が確保できる場合には魅力のある伝送ですが、広い広いインターネットでは・・・なのです。

この事から、残念ながらインターネットでは小規模な通信を使った放送に近いこと(?)は可能だが、本当の意味での放送を行うだけのパフォーマンスは持っていないと考えています。もっとも、元々ベストエフォートなインターネットで、品質が問われる放送を実現すること自体、矛盾していますから。